「行程さん」はなぜ終わったのか。代わりを探している人へ、いま選べる旅のしおりサービス
2020年に終わった「行程さん」。登録不要でURLを送るだけという手軽さは、いまも代わりが見つけにくい。当時の使い勝手を振り返りながら、現在選べるサービスと選び方の基準を整理します。
「行程さんって、まだ使えないの?」
旅行の幹事をしたことがある人なら、一度は検索したことがあるかもしれません。旅のしおり作成サービス「行程さん」は、2020年6月5日をもって終了しました。 会員登録もアプリのインストールも要らず、URLを送るだけで全員が旅程を見られる。あの手軽さを覚えている人ほど、代わりが見つからずに困っています。
この記事では、行程さんが何をしてくれるサービスだったのかを振り返ったうえで、いま選べる代わりのサービスと、次に同じ思いをしないための選び方を整理します。旅行のたびに幹事をしている人に向けて書いています。
行程さんとは、どんなサービスだったのか
行程さんは、ブラウザで旅のしおりを作って共有できるWebサービスでした。アプリではなく、ブラウザで完結する形だった点が大きな特徴です。
使いはじめるのに必要なものが、ほとんどありませんでした。アプリのダウンロードも、メールアドレスやパスワードの登録も不要。ブラウザで開いて、しおりのタイトルと行程を書けば、それだけで共有用のURLが発行されます。
作れる内容は、しおりのタイトル、概要、行程、そして共同編集用の合言葉。旅程の各項目にURLを貼り付けることもできました。飲食店の予約ページや、施設の公式サイトを行程に紐づけておける、という使い方です。
共有の手軽さが、いちばんの価値だった
行程さんの共有手段は、URLだけではありませんでした。QRコードの生成、LINEでの共有、テキストとしての出力にも対応していました。
そして重要なのは、共有された側にも何の準備も要らなかったことです。送られてきたURLを開けば、そのまま旅程が読めます。友達に「このアプリ入れといて」と頼む必要がありません。
旅行の幹事をやったことがある人なら、この差の大きさが分かるはずです。5人のグループ旅行で、全員にアプリを入れてもらい、全員にアカウントを作ってもらう。それだけで、しおりを作る労力と同じくらいの手間がかかります。
印刷とオフライン閲覧にも対応していた
行程さんは、パソコンから紙に印刷することもできました。オフラインでの閲覧にも対応していたと記録されています。
電波の届かない山間部や、海外で通信を絞っているとき。旅先では意外とインターネットにつながらない場面があります。紙のしおりが一枚あるだけで安心できる、というのは旅慣れた人ほど実感しているところです。
サービス終了と、残された「保存期間」の教訓

行程さんの終了は2020年6月5日でした。作成者の方は、行程さんに代わるサービスとして「Pen」を発表しています。
ここで振り返っておきたいのが、行程さんの保存期間です。行程さんで作ったしおりは、約3ヶ月公開されたあと削除される仕様でした。
これは当時としては合理的な設計です。旅行は終われば見返す機会が減りますし、サーバーの負担も減らせます。ただ、この仕様には副作用がありました。
「気づいたら消えていた」が起きやすい設計だった
旅行から帰ってきて、写真は整理したけれど、しおりはそのまま。3ヶ月後にふと見返そうとしたらURLが開かない。そういう体験をした人が少なくありませんでした。
さらにサービス自体が終了すると、まだ保存期間内だったしおりも見られなくなります。旅の記録として残しておきたかったものが、告知を見逃した人の手元からは消えてしまう。
この「消えるかもしれない」という不安は、旅のしおりサービス全般につきまとう問題です。無料で提供されている以上、いつ終わってもおかしくない。だからこそ、書き出せるかどうかが選ぶときの重要な基準になります。
いま選べる、旅のしおり作成サービス

行程さんの代わりを探すとき、選択肢は大きく2つに分かれます。アプリとして提供されているものと、ブラウザで完結するものです。
主なサービスを整理すると、次のようになります。
| サービス | 形態 | 登録の要否 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| tabiori | iOSアプリ | 必要 | 機能が非常に多い。位置情報共有、写真共有、割り勘計算まで対応 |
| しおりす | Webサービス | 記載なし | デザインが選べる。ファイル添付に対応 |
| しおりる | Webサービス | 不要 | 三つ折りのパンフレット形式で印刷できる |
| たびしる | Webサービス | 不要 | リアルタイム共同編集。外貨対応の予算入力 |
| タビカンジ | Webサービス | 記載なし | ドラッグ&ドロップで予定を編集できる |
| 旅しお | Webサービス | 記載なし | 2018年から運用されている。シンプルな作り |
| 旅程さん | Webサービス | 不要 | 予定ごとに時間の守り度を3段階で設定できる |
表だけでは選びにくいので、それぞれの向き不向きを補足します。
機能の多さで選ぶなら tabiori
tabiori は、旅のしおりアプリとしては最大手といっていい存在です。App Storeの評価は5段階中4.5、評価件数は6万件を超えています。提供元は GOTARU, Co., LTD.。更新も頻繁に行われています。
機能の幅が広いのが特徴です。しおり作成と共有に加えて、地図での次の目的地表示、旅行期間中だけの位置情報共有、スケジュールアラーム、高画質写真の保存とシェア、持ち物チェックリスト、オフライン閲覧、コンビニ印刷まで対応しています。
料金は基本無料で、tabiori premium が月額480円、年額3,900円です。
ひとつだけ注意点があります。共有相手にもアプリのインストールとアカウント登録が必要になる点です。旅行メンバー全員がその手間を受け入れられるなら、機能面では最も充実した選択肢になります。
ブラウザで完結させたいなら Web サービス
行程さんの「登録不要でURLを送るだけ」という体験に近いのは、ブラウザで完結するサービスのほうです。
しおりる は三つ折りのパンフレット形式で印刷できるのが特徴で、紙のしおりにこだわりたい人に向いています。たびしる はリアルタイムでの共同編集に対応していて、外貨対応の予算入力もできます。海外旅行の幹事に向いた作りです。
しおりす はデザインの選択肢が多く、ファイル添付にも対応しています。ただし広告の表示が多いという声もあります。
選ぶときに見ておきたい4つの点

サービスを比べるとき、機能の数だけを見ると失敗しやすくなります。実際に使うときに効いてくるのは、次の4点です。
- 共有相手に何を求めるか — 登録やインストールが必要なら、その分だけ「見てもらえない」確率が上がります
- 保存期間はどれくらいか — 短いと旅の記録が残りません。延長できるかも確認しましょう
- 書き出せるか — PDFやテキストで手元に残せれば、サービスが終わっても困りません
- 紙に印刷できるか — 電波のない場所では、紙がいちばん確実です
旅の種類で、選ぶべきものは変わる
同じ「旅のしおり」でも、旅の中身によって困る場面は違います。幹事として実際にぶつかりやすい3つの場面から考えると、選びやすくなります。
友達との旅行なら、相手の手間を最優先に
友達4〜5人での旅行は、いちばん「見てもらえない」が起きやすい場面です。作った本人は熱心でも、他のメンバーは出発直前まで旅程を見ないことがよくあります。
ここでアプリのインストールと会員登録を挟むと、脱落する人が出ます。結局その人だけLINEで個別に集合時間を聞いてくる、というのは幹事あるあるです。
この場面では、URLを開くだけで見られるサービスを選んでください。 機能の少なさより、相手のハードルの低さが効きます。
家族旅行なら、印刷できるかを見る
子ども連れや親世代との旅行では、スマホを見てもらうこと自体が難しい場合があります。年配の方に「アプリ開いて」と言うより、紙を一枚渡すほうが早いこともあります。
印刷レイアウトの質はサービスによってかなり差があります。三つ折りのパンフレット形式にできるもの、折りガイドが入るもの、ただ画面をそのまま出力するだけのもの。旅行前に一度、実際に印刷して確かめておくことをおすすめします。
遠征やフェスなら、時間の精度が要る
ライブやフェスの遠征は、開演時刻という絶対に動かせない予定が中心にあります。逆に、それ以外の時間はかなり自由です。
このとき「全部の予定を分刻みで埋める」タイプの旅程表は、かえって使いにくくなります。守るべき時刻だけがひと目で分かって、あとは余白になっている。そういう見え方のほうが、当日の判断が速くなります。
同じ思いをしないために、何を見て選ぶか
行程さんの終了で多くの人が困ったのは、しおりがサービスの中に閉じ込められていたからです。手元にデータが残っていれば、別のサービスに移すだけで済みました。
だから、次に選ぶときはこう考えてほしいのです。「このサービスが明日なくなったら、自分のしおりはどうなるか」と。
書き出せるサービスを選ぶ
PDFやテキストで書き出せるサービスなら、最悪の場合でもデータは手元に残ります。旅行の記録としても、次回の旅程を組むときの下敷きとしても使えます。
書き出し機能があるかどうかは、たいてい機能一覧に書かれています。無いサービスを選ぶなら、スクリーンショットを撮っておくくらいの備えはしておいたほうがいいでしょう。
保存期限の扱いを確認する
無料サービスには保存期限があるのが普通です。問題は期限の長さそのものより、期限が来る前に知らせてくれるかどうかです。
黙って消えるのと、事前に知らせてから消えるのとでは、受け取り方がまったく違います。告知があれば、書き出すなり印刷するなり手を打てます。
紙に印刷しておく
これは身も蓋もない話ですが、いちばん確実です。旅行の直前に一度印刷しておけば、サービスの都合にも電波状況にも左右されません。
印刷レイアウトがきれいなサービスを選んでおくと、この備えが苦になりません。折りたたんで財布に入るサイズになるものもあります。
旅程さんが、行程さんから受け継いだこと
最後に、この記事を書いているサービスについても書いておきます。
旅程さんは、行程さんが空けた席を埋めるつもりで作りました。名前も、意識してそう付けています。
行程さんの良さだった「登録不要・URL共有だけで完結」は、そのまま引き継いでいます。作る人も、見る人も、会員登録は要りません。送られてきたURLをブラウザで開くだけで旅程が読めます。
保存期限は、黙って切らない
無料でお使いいただく場合、しおりの保存は最終更新から6ヶ月です。ただし編集するたびに期限は延びます。
そして期限が近づいたら、しおりの画面でお知らせします。 黙って消すことはしません。行程さんの終了で困った経験があるからこそ、ここは機能より先に決めました。
PDF・テキストでの書き出しは、いつでもできます。もしサービスを終えることになったら、6ヶ月前に告知して、全データをダウンロードできる期間を必ず設けます。
「つめつめの旅程」を作らせない
旅程の組み方そのものについては旅程表の作り方に、予定を詰め込みすぎないための工夫は旅程を詰め込みすぎて疲れる人へにまとめています。
もうひとつ、旅程さんには行程さんに無かった考え方を入れています。予定ごとに、時間の守り度を3段階で書けるようにしました。
- 🔒 時間厳守 — 新幹線や開演時刻など、遅れたら終わりのもの
- ⏰ ◯時までに — チェックインなど、それまでに着けばいいもの
- 🍃 じゆう — 「12時ごろ」と表示され、時間に縛られないもの
分刻みの完璧な旅程は、当日ひとつ崩れると全部崩れます。守るべき時間だけを目立たせて、あとはゆるくしておく。そのほうが旅は楽しくなる、という考え方で作っています。
よくある質問
行程さんはもう使えませんか?
はい。2020年6月5日にサービスが終了しています。作成者の方は代わりのサービスとして「Pen」を発表しています。
行程さんで作ったしおりは取り出せますか?
サービスが終了しているため、いまから取り出すことはできません。当時ダウンロードやスクリーンショットを残していた場合のみ、手元に残っています。
共有相手にアプリを入れてもらう必要はありますか?
サービスによります。tabiori のようなアプリ型は、共有相手にもインストールと登録が必要です。ブラウザで完結するサービスなら、URLを開くだけで見られます。旅程さんも後者です。
紙のしおりも作れますか?
多くのサービスが印刷に対応しています。しおりるは三つ折りのパンフレット形式、たびしるは5種類の印刷デザインを用意しています。旅程さんも二つ折り・三つ折りの折りガイド付きで印刷できます。
無料でどこまで使えますか?
サービスごとに異なります。tabiori は基本無料で、より多くの機能を使う場合は月額480円または年額3,900円のプレミアムがあります。旅程さんは現在、全機能を無料で提供しています。
旅のしおりは、旅行の楽しみを分けあうための道具です。作るのに手間がかかったり、共有するのに相手の手間を借りたりするのでは、本末転倒になってしまいます。
行程さんが多くの人に使われたのは、その手間がいちばん少なかったからでした。同じ手軽さを、もう少し長く続けられる形で。旅程さんはそう考えて作っています。